月から堕ちたアリス
『…って言っても、何をどうすれば良いんだか…。魔法ってどうやったら使えるのかな??』



意気込んだものの、今のあたしに魔法なんて使えないんじゃ…??

これじゃぁ宝の持ち腐れじゃん。



『うーん…』

「何してんのさ…。」



振り向くとラビが腕を組んで怪訝な顔をして立っていた。



『何かよく分かんないけど、魔法使える気がしたんだよねー…。』

「記憶があった頃は普通に使えてたからなー。体が反射的に動いちゃった訳だ。」

『練習しようと思って勢いで出てきたは良いけど、あたし魔法の使い方なんて分かんないもん。』

「今は力も記憶も無い状態なんだから、まぁ当然だね。」



『当然だねって…じゃああたしどーすれば良いの?!』

「そりゃとにかく記憶を探し集めるしかないでしょ??」

『それは分かってるけども!!せめてちょっとくらい使えなきゃヤバイんじゃないの?!何か折角杖とかあるんだしさー。』



ラビは溜め息をついた。


いやいや、つきたいのはこっちです。



「優は甘く考えすぎだよ。魔法っていうのはすぐ使えるようになるものじゃないし、記憶を失ってることによって、今の優の状態は魔法とは無縁の初期段階に等しい。魔法を習得するには日々精神を鍛えて、ひたすら練習しなきゃいけないんだ。でももちろん今はそんな時間無いし…」

『…それってつまり…記憶を取り戻さなきゃ魔法を使うのは不可能ってこと??』

「要はそういうことだね。」

『そんなぁ――…』



あたしはがっくりと肩を落とした。
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