月から堕ちたアリス
中に入ってみると、霧は想像より遥かに濃いものだった。


今はラビと手を繋いでるから平気だけど、もし手を離してしまったら確実にはぐれてしまいそうだ。



『それにしても、何なのここ…??何で塔の中にこんな霧が…』

「優、このワンダーランドは…??」

『…はいはい。不条理と非現実が支配する世界、ね。』

「もう覚えたよね??それに尚且つ今は魔術だらけの魔術師の塔の中。ここまで来ればもう本当に何が起こってもおかしくないよ。」

『あたしってば、全く…何て世界にいるんだろう…。』

「何を今さら…。」



霧は一向に消える気配はない。


どうにかしなきゃ。



『すみませーん!!リタルダンドさんに会いに来ましたー!!いませんかー?!』



あたしの声が響き渡る。



しかし特に誰かが現れる様子もない。



まぁ現れても霧で見えないけど…。


















――と、そんなことを思った矢先…





















「…優、何かいる――!!」



ラビがそう言って、一緒に立ち止まった。



すぐ目の前に黒い物体が見えた。


霧のせいでボヤーっとしか見えないが、確かに何かがいる。



『誰…??』





――ビュウゥゥゥッ…!!!!――





『「っ?!」』



あたしが言葉を発した瞬間、あたし達を突風が襲った。
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