月から堕ちたアリス
「君が止められないとはなぁ、ドルチェ。」
誰かの声が聞こえた。
『誰…どこにいるの??』
「…上。」
ドルチェと呼ばれたこの少年に言われて上を見上げる。
『ぎゃあぁっ!!何で天井に立ってんのあの人?!』
そこにいたのは、天井に立ちセミロングの黒髪を後ろで1つに結っている若い男性。
ドルチェと同じように白いマントを纏っている。
ってか何でここの人達は普通に登場できないの??!!
「品の無い叫び声だねぇ。この世界じゃそんなに驚くことでもないだろう。」
そう言ってその人は天井から壁、壁から床へと歩いてあたし達の元へやって来た。
「いらっしゃい、よくここまで辿り着いたなぁ。とりあえずドルチェを連れてきてくれたこと、先に礼を言おう。」
彼がパチンと指を鳴らすとベッドが現れた。
あたしはそこにドルチェを降ろす。
「まずは自己紹介をしよう。僕が、君の会いたがっていたリタルダンドだ。リットとでも呼んでくれ。」
リットはニッコリと笑って手を差し出してきた。
あたしはその手を握る。
この人が“奇跡の魔術師”リタルダンドか…。
柔らかい雰囲気の人だな。
何より一番引っ掛かったのはお年寄りじゃなかったということ。
ラビの推測通り20代くらいの若い人だ。
何でラビは若いって推測できたんだろ??