【BL】ネコミミはえちゃった。
●フロントフォークに信愛―睦月の場合
「これ、すげーんだよ?」
これっていうのは、明衣さんの「耳」のことだ。
アッシュグレーの耳を指でぴんぴんといじりながら、触ってみる?と笑う明衣さん。その笑顔がとてつもなく眩しくて、俺は目を反らしてしまった。
普段ならガンを飛ばすこの目ですら、明衣さんには適わない。
ガンを飛ばすどころかむしろ、こんなにも明衣さんから目が離せなくなったのはいつからだったんだろう。
……明衣さん。
俺は、明衣さんにとって
「ただの後輩」?
少なくとも俺は違うよ。
「オイコラぁ、睦月!なに他のコト考えてんだ、あ"!?」
俺の我ながら純粋な部類に属するソフトな思考はどうやら、想いの君本人によってたたっ斬られたらしい。
「…へっ…!?」
思わず間抜けな声が漏れて、
ぷんすかと形容するにはあまりにも黒すぎるネコミミ付き明衣さんを、俺は無意識に見つめた。
「へらへらへらへらしやがって……あ、そっか。
そっか、そうだよな。こんな耳、気持ちわりーもんな、触んのなんてやだよな……」
今更だけど、明衣さんはアップダウンの激しい性格だ。
一応、明衣さんのことを考えていた俺に軽くキレかけた明衣さんは、今はまるで…猫というよりは、犬みたいにしょぼんと落ち込んでいた。
その様子までもが妙に可愛く見えて、あぁ、やっぱり俺はこの人に惚れてるんだなあと思ってしまう。