【BL】ネコミミはえちゃった。
「睦月、俺と住もう」
突然の言葉は、バカみたいに静かな真昼の街に浮かんで消えた。
明衣さんは身体を俺に向けてはいたけど、俺のことは見ていない。
じいっと床あたりを見つめていた。
コポコポと響くポットの音がやけに大きく感じられて、俺の中を今にも弾けてしまいそうな気持ちが侵してゆく。
「高校もちゃんと行け。
睦実のことは俺がする。メシ代も給食費も俺が面倒みてやる」
明衣さんは冷静な口調で、トーンを変えず一方的に言い放った。
あまりにもさらりと流れた驚くべき言葉に、一瞬理解が遅れる。
ただ────……
ただ俺には、明衣さんの顔が赤く染まっているように見えた。
「明衣さん…」
きっと悪酔いだ。
明衣さんは人がいいから俺の面倒を見ようとしてる、それだけ。
「(それだけだ…絶対)」
明衣さんの酔いを覚ますために水を汲みにいこうとする俺の手を、明衣さんの手はガッチリと掴んだ。
ごつごつしていて皮張った、大人の男の手だと思った。
「明衣さ」
「…睦月ッ!!」
腹の底からブッ飛んできたような声に、俺の身体はピタリと固まって動けなくなる。
「……睦月。」
今度は噛みしめるように、もう一度。
返事をしようと口を開けば、カラカラに乾いた喉がひくっと音を立てた。