【BL】ネコミミはえちゃった。
●二人の特別―幸弘の場合
「さく」
俺が朔良の名を呼んで振り向かなかった事は未だかつて無い。
現に、今も。
泣きそうに揺らいだ瞳が俺をうつした。
「……俺が、朔良を嫌いになると思う?」
しん、と沈黙が辺りを包む。でも、としゃくりあげた朔良の声がその時間を引き裂いた。
「でも、こんなのっ…ヘン、だろぉ?」
俺の腰元をぎゅっと掴んでいた朔良の手がするりと解けて、地面に力なく伏せる。俺は朔良に向かい合うようにしゃがみながら言った。
「それでも」
明るい茶色のフローリングの上に乱雑に置かれた朔良の服を、これまた散らかったソファの上に放り投げる。
「俺がさくを嫌いになるハズ、無い」
再び、沈黙。
俺はすぐ目の前の朔良の、地面に置かれた手の甲にずっと視線をやる。
朔良は多分、俺を見ていた。
「信じらんない?」
「…ゆき」