【BL】ネコミミはえちゃった。
「坂口くん」
今度こそ、俺は顔を上げられなかった。一応俺だってオトコだし、オトナだ。そう何度も泣いてちゃ駄目なのに…思えば思う程に涙がこぼれる。
楠木さんは俺を心配しているんだろう、そう思うと苦しくなった。なのに嬉しくなる。
楠木さんは優しい人だ。
その点、俺は?
ハッキリしないし、他人に迷惑かけてばっかり。優柔不断な性格のせいで、きっと誰かを傷つけてきた。
「坂口くんは優しいな」
だから、この人の口からそんな言葉が飛び出した時、俺は顔を上げずにはいられなかった。
「……くすきさん…?」
訝しむ俺に構わず続ける楠木さん。
「優しくて親切な対応は優しくなくたって出来るけど、ただ単純に他人を思うことは…誰にでも出来ることじゃない」
楠木さんが笑う。
俺の心に、ふうっと風が吹き込んだ気がした。