【BL】ネコミミはえちゃった。
楠木さんは、この世の終わりみたいに切羽詰まった俺をじっと見ている。目を逸らさずに。
それだけで――たったそれだけで、俺は舞い上がってしまうんだ。
「君に会えて良かった」
そんなコトバが降り注げば、俺は昇天寸前で。顔がぼんっと赤くなるのがわかった。
何も言えずに、ただ金魚みたいにぱくぱくと動くだけの俺の唇。
昔からそうなんだ、と楠木さんが切り出す。
「必要以上に周りを伺って、頑張って、頑張って、頑張るだけの俺は……」
初めて見る。
どこかスレたような、でも脅えた楠木さんの瞳の色。
いつもなら…他の人のなら、
面倒に巻き込まれたくないとすぐに逸らしているハズの俺。
だけど、逸らせなかった。
「友達も、色んな女性も、世間も……みんなが“頑張っている人”を認めてくれるけど」
そこで一区切り、楠木さんは自嘲気味に笑った。
「いつの間にか――少しでも気を抜いたら、全て否定されるような気がしてたのかな」
完璧、優しい、努力の人、穏やか、丁寧、純粋、立派、公正、快活、優秀―――――息をする度、何かをする度に増えていく手枷・足枷。
このままじゃ、
楠木さんが沈んでしまう。