恋・したい
火照ってる頬を北風が冷やしてゆく。長い髪がふわふわとなびいている。
気持ちを圧し殺すのって大変だわ。恋ってこんなに切なくて苦しくて楽しくて嬉しいものだって今まで知らなかった。

柚季に近付きたい
触れたい
そばに居たい…

時折胸がきゅうって狭くなると痛いの。切ない痛みが胸を締め付けるのよ。
フェンスに頭をつけて空を見上げた。雲がゆっくりと流れてお日さまはほんわりと街を照らしていて陽射しが私のそばまで来てるけど雲が意地悪をして隠してるの。
まるで私の気持ちみたいに。
背伸びをして職員室へと戻る為重いドアを開けた。


「野上先生~、参りましたよ」

授業を終え、席に着きながら尾崎先生が愚痴をこぼす。

『何があったんですか?』

パソコンから目を離さずに業務的に答えた。

「生徒の暴言には呆れましたよ。野上先生は人気あるんですね」
『生徒から好奇の目で見られてるだけですから』

資料作りを終わらせて早く帰りたいや。
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