恋・したい
『んなッ!?』
【あ~美味しいデザートだった♪じゃまた授業でね】

重い扉を片手で押し開け手を振る柚季を黙って見てる事しか出来なかった。
だっかっらっ!!
普通にさりげなくこんな事しないでよう―。気持ち抑えられなくなる…よ。泣いたらだめ、授業が待ってる。柚季が待ってる。涙を堪えて職員室へ戻った。

「野上先生、プリンいかがですか?」
『はっ?』

席に着くなり三浦先生からプリンを渡された。

「蕎麦屋の主人が野上先生にってくれたんですよ。お客さんから頂いたんですって」
『ありがとうございます…』

プリンを受け取ってバッグに仕舞い、教科書と資料を持ち自分の受け持ちのクラスへと向かう。…ちょっぴり緊張。

『席に着け~、無駄話するな』
「起立、礼、着席」

教室へ入りすぐさま日直の掛け声が響く。

『今日から新しい小説の授業だ。佐倉読んでみろ。85ページ』
【はい】

柚季の声が聞きたくて指名したなんて誰にもバレてないよね。内容はほのかな初恋の話だ。初々しくてどこか悲しい物語。
昨日資料作りながら少し泣いちゃった。
< 124 / 244 >

この作品をシェア

pagetop