恋・したい
スリッパを履き柚葉ちゃんの後ろをついてゆく。ひとりで歩いたら迷いそうなくらい広いな。家とゆうよりお屋敷だね。

『すごい立派なお屋敷ね。ホテルみたい』
「別にこんなに広くなくったってよかったんですけどね。逆に寂しいですよ」

階段を降りながらため息混じりで答える柚葉ちゃんの声は少し弱々しかった。

「此処です。座ってください、今準備しますから」

パーティーが出来るくらい広い広いキッチンに圧倒されながら中央にあるテーブルのソファに腰かける。
ほんとすごいわ。柚季がここで料理してる姿を想像してまたにやける。

「簡単な物ですみません」

まんまるいパンとポタージュスープを運んできてくれた。

『そんな事ないわ、ありがとうね。頂きます』

パンをちぎって一口食べるとふんわりとバターの薫りがした。

『美味しい~』
「ゆずちの読みばっちりだな」
『え?』
「きっと夜中に起きるだろうって作ってたんですよ。本人は待ちきれずに寝ちゃったけど」

可笑しそうにクスクス笑う柚葉ちゃんの言葉にパンを食べる手が止まる。私の事いつも考えてくれてるって、私をみてくれてるって。
こんなに想ってくれてるのに私はなんて最低な人間なんだろう。
自分が嫌で情けなくて涙が出そうになる。

「ゆっくり食べてくださいね。じゃお休みなさい」
『うん…ありがとう。お休み』

柚葉ちゃんに手を振り再びパンをかじる。柚季の優しさが込もってるパンを味わって食べた。
< 150 / 244 >

この作品をシェア

pagetop