恋・したい
「柚季様お久しぶりです!わたくしの事覚えていらっしゃいますか?」

やや間があって

【ああ、一宮のご令嬢さんだよね?】
「琴那とお呼びください」

あ―あ、耳まで紅くしちゃってさ。…好きなんだね。
私は無言で柚季の右手から皿を奪ってその場を離れバルコニーの近くの壁へ移動してケーキを頬張る。

『うう~~~ん♪』

あまりにも美味しくて歓喜の雄叫びを圧し殺す。
しあわせっ!!!
ヤバいわあ…

「あの…お一人ですか?」

ケーキに夢中になっていると不意に声をかけられビクッ、と小さく身体を震わせた。
声の主を辿る様に視線を合わせると、そこには少し照れて左耳の後ろを掻いている茶色い短髪の男性が立っていた。

『は…ひ』

モゴモゴと口を動かしながら返事をしたら、ぷ―っと吹き出して

「あっははははは!!ふっ…くくくっ」

大爆笑されてしまった。
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