恋・したい
【莉梨愛ちゃん僕今すごく悩んでるんだ】

ココアのふんわり湯気の向こうの柚季の表情は曇り空だ。

『進路の事でしょ?大学は推薦決まったってゆってなかったっけ』
【決まってたけど…パパが一緒に来ないかって誘ってるんだ】

私の第六感が働く。でもわざと何処に行くの?と白々しく聞いてみる。

【イタリアだよ。いつ日本に戻れるかわからないって】
『卒業までまだ時間あるからゆっくり考えればいいじゃない』

ココアに口をつけたらまだ熱かった。

【時間ないんだ。来週まで決めないと】
『えっ!?来週?』
【パパがイタリアの店に戻る時僕を連れてくって。料理の吸収率が今一番いいから一緒に行くぞって】
『そ…んな、唐突だね』

カップを持つ手がカタカタ震えてる。

【僕行きたい。パパのそばで修行したいんだ!でも莉梨愛ちゃんと離れたくない!】
『わがまま言わないの。今チャンス逃したら一生後悔するよ』
【莉梨愛ちゃんを放しても後悔するよ!】

カシャン!

カップが倒れてココアがテーブルに染みを作る。柚季にされるがままキスを受ける。
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