恋・したい
もちろんそんな事があったと由宇には話してない。というか話せない。

『じゃあお泊まり決定という事で』

会計を済ませ、由宇と手を繋いで少しふらつきながら歩く。夜風が涼しくなってきて秋がそこまできているんだなと肌で実感した。


「お風呂入ってくるから適当にしてて」

由宇は着替えとタオルを持って部屋を出ていった。整理整頓された綺麗な部屋。窓にはフリルたっぷりの真っ白なカーテン。
…落ち着かない。
こっそり階段を降りてたら

「りぃちゃんどうしたの?」

由宇のお母さんにばっちり見つかってしまった。

『ちょっと忘れ物を取りに行って来ますから』

ゆっくりと玄関を締め、アパートへダッシュした。


「あれ?りぃなんで…」
『由宇お帰り』
「もしかして持ってきた!?呆れたぁ」

由宇はベッドに腰掛けてパソコンを打つ私を仕方ないなぁという表情で微笑む。

『完璧な職業病だよね』

ハハハ、と乾いた私の笑い声が小さく響いた。
< 56 / 244 >

この作品をシェア

pagetop