恋・したい
『これありがとう。ハンガーにかけておくね』

形を整えて窓側に置く。ふと見上げたら干しっぱなしの洗濯物が草花の様にしゅん、と萎れている。慌てて取り込みタンスに突っ込んだ。
下着見られなかったかな?床は散らかしてなかったけど洗濯物ずっと干しっぱなしだった事忘れてた。由宇に甘えてたな…
ビール飲みたくなってきたなあ。でも柚季の邪魔したくないしな―。

【もう少し待ってね。莉梨愛ちゃんはい!】

ゆっくりと回転しながら弧を描いて缶ビールが私の元へ飛んできた。

【ナイスキャッチ】
『ありがとう』


プシュッ、カキッ。
ぐびっ。

『美味し~♪』
【こっちも美味しいよ。たくさん食べてね】

次々と料理を並べる柚季。とてつもなく美味しそうな匂いにうっとりしちゃう。

『頂きまぁ―す!』
【頂きまぁす】

柚季が作った料理はあのレストランと同じ味がした。高校生とは思えない腕前だ。

『お父さんの後継ぐの?レストラン並みの味だよ』
【後継ぐってゆうか、自分のお店出せたらいいなって思ってるんだ。自己流もいいけど先ずは学業かなって。高校卒業して大学行って留学とかしたいな】

へぇ…、これからの事きちんと考えてるんだ。将来の夢を自信を持って言える高校生は今数少ないだろう。

『柚季は偉いね』
【えっ?】

しまった、思った事口に出しちゃったよ。
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