恋・したい
どくん、どくん、どくん、どくん、どくん。

心臓が
うるさい

道路を通る自動車のエンジン音も、遠くでしつこいくらい吠えている犬の鳴き声も私の心音には敵わない。

【…痛そう】

柚季がいつの間にか私の手をとり、赤くなった手首を撫でている。びくっ、と身体が反応した。

【ごめんね。痛い…よね?】
『違うの。心配してくれてありがとう』
【莉梨愛ちゃん僕が片付けておくからお風呂いってきたら?】

やさしく
ほんとにやさしく微笑むのね。天使みたいな笑顔。

『う…ん』
【覗かないから安心して♪】
『なっ!何ゆってるのっ!』

勢いよく立ち上がりバスルームのドアを乱暴に閉めた。服を洗濯機に投げ入れシャワーのコックを捻る。

『冷たっ!』

冷水を思いっきり浴びてしまった。今火照ってるからちょうどいいかあ…。冷静にならなきゃ。

でもね
笑う柚季
話す柚季
料理を作っている柚季
優しく微笑む柚季
…天使の笑顔の柚季

頭を振ったって離れない。それどころか、ますます私の深い処まで入り込んで染みついていくよ…。
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