恋・したい
【あれ…?】

美術館に着き中に入ろうと自動ドアの前に立つが一向に開かない。うす暗いロビーを覗き込み看板らしき物を見つけた。

『奥に休館日って看板立ってるよ』

私がほら、と指差し柚季に教える。

【嘘!そんな…】
『探してみよっか?行こ』

しょんぼりしたまま私に引っ張られながら歩く柚季が可愛い。

【せっかくの美術館デートが…】

しかもちょっぴり拗ねてるみたい。此処ら辺に個展開いてる場所あったかなぁ…
二時間歩き続け探したけど見付からず足が痛くなってきた。おろしたてのパンプスだから履き慣れてないんだよね。

【莉梨愛ちゃんご飯にしない?もうお昼だし…】
『そうだね。あ、此処行こう』

信号を渡ってデパートのエレベーターに乗る。四階のボタンを押しゆっくりと上昇し始めた。

『疲れたね―。柚季何食べる?』
【ごめんね、僕のリサーチ不足で。莉梨愛ちゃんつまんないでしょ?】

ポーン、と四階に着いてドアが開く。柚季が開ボタンを押してくれて先に降りた。

『楽しいよ』

柚季の顔を真っ直ぐ見て答える。

『思い通りにいかない事だってあるよ。でも楽しい。柚季とだから楽しいよ』

急にそっぽを向き肩を抱かれ、たくさんある飲食店の中の一つのレストランに連れ込まれた。
店員に案内され席に座ったけど私は肩を抱かれたまま柚季の隣に居る。

『ねぇ、注文しようよ』

そっぽを向いたまま頷く柚季。

『メニュー見ないの?』
【ハンバーグとチョコパフェ】

そっぽ向いたまんま答えられた。
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