恋・したい
「お待たせ致しました。此方は前菜の…」
「すみません…」
「ママぁ~!」

周囲の声や雑音が頭の遠い方で聞こえる。クリアに聞こえるのは私の心音のみだ。
身体の体温は一気に上昇、顔はますます熱くなる。

【さくらんぼみたいに紅いね、触ってみたいな】

ばくんっ!!!

痛い…
心臓ってこんなに早く動くっけ?こんなに胸が苦しくなるくらい動くものだっけ?

ばく、ばく、ばく
まだ続いてる。

「りぃ食べないの?」
『た、た、食べるよぅ…』

フォークを持つ手が震えてる。ぎゅっと握り口に運ぶ。
でも
味が解らない。味覚よりも鼓動が勝っていて頭まで揺れてる。

『…ごめん、帰るね』
席を立ち、椅子を直す。

【送ってくよ】

すかさず柚季が立ち上がった。

『要らないから。由宇の事よろしくね』
「りぃ、気を付けてね」

由宇が手を軽く振りながら笑ってるけど目が心配してる。一礼してひとり店を出て居酒屋に向かった。
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