准教授 高野先生の恋人
9.ずっと一緒に

5月、一番初めの土曜日。

本格的なゴールデンウィーク突入である。

よく晴れた行楽日和の午後、私たちは少々複雑な心持で車で郷里を目指していた。

ナビの目的地は“実家”で、これは寛行さんのご実家のこと。

そして、立ち寄り地として指定されているのが“詩織実家”、私の実家である。

後部座席には衣類などが入ったそれぞれの荷物の他に小さな箱がもう一つ……。

「わざわざ買ってきてくれたんですね」

「うん。洋菓子がお好きだって君から聞いていたからね」

箱の中身はY市では有名な洋菓子店のロールケーキ。

「お父さんね甘いものとか好きで。だからすごく喜ぶと思う」

「だと、いいけど」

美味しいと有名なお店の、旬のイチゴのロールケーキ。

開店から午前中にはすぐに売切れてしまうという貴重な商品。

彼なりの私の両親への心遣いが素直にとても嬉しかった。


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