准教授 高野先生の恋人
こうして二人で帰省するのは2度目のこと。
年末年始の帰省のときは、わざと自宅周辺のドラッグストアで車を降ろしてもらった。
だけど今回は――
「寛行さん、ぜんぜん平常心ですね」
「そんなことないさ。僕だってけっこう緊張してるよ」
寛行さんは私をきっちり実家まで送り、私の両親に挨拶をすることになっている。
「なんか、自分の家に帰るのに私のほうがよっぽど緊張してるみたい」
「僕は暗示をかけてるんだよ」
「暗示???」
「そう。緊張しない為のおまじない」
「え?え?え?それってどんな!?」
私は興味津々で食いついた。
が、しかし――
「“今日は父母懇談会”って心の中で何度も唱えるんだよ。そうすると……」
「聞いた私がアホでした……」
教職員限定のそんなおまじない、私なんかに使いこなせるわけがなかった。