准教授 高野先生の恋人

私たちのちょっと特別な里帰りドライブ。

道中は長かったような短かったような……。

「ナビはあと10分で到着って言ってるけど、今この辺だとそんな感じ?」

「そうですね。あっ、お母さんにもうすぐ着くってメールしときますね」

にわかに高まる緊張……落ち着かない。

そんな私に寛行さんはおっとりとした口調でこう言った。

「大丈夫だよ。僕こう見えてご父母の方々のウケはけっこういいんだから」

「ホントですかぁ?」

思い切り疑わしげに彼を見る。

「ほんとほんと。あー、でも僕まで緊張してきちゃったかも。君のせいだよ」

「えー、そんなこと……」

「何しろ僕、彼女のご家族にご挨拶させてもらうのなんて初めてだからなぁ」

「そ、そうなの!?」

「うん。だからかなりドキドキ。でもさ、こういうのって考え方次第かもね」

「え?」

「楽しみといえば楽しみでもあるわけだよ。君のご両親てどんな方なのかな、って。

それに、こんな“初めて”は今日だけだと思えば頑張れる気もする。

だってさ、今日の次にお目にかかるときはもう初対面じゃあないんだからね」

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