姫の導-ヒメノシルベ-
唐突に思い当たり、悠唯は声を上げた。
そうか、連絡すればよかったのだ。
そんな簡単なことに気が付かなかった自分は、馬鹿だ。
駆けている足は止めずに、悠唯はコートのポケットを探る。
そして、桃色の携帯電話をその中から引っ張り出した。
徐々に切れてきた息を気にも留めず、それを開いた悠唯は慌てて母の番号を引き出す。
瞬間。
『ロン!姫を捕らえるのだ!!』
「…っ…!!」
上の方から聞こえる声と。
『ギュシュアアァアァア!!』
聞いたことのない、奇声。
それを耳にし、悠唯の背が再び冷える。
ばさっばさっと、鳥が羽ばたくかのような音に、悠唯は思わず振り返る。
そして。
「…っきゃああああっ!!」
駆けながら、悲鳴を上げた。
そこには、見たことのない大きさの赤い目をしたタカが、上空から悠唯を追って来ていたのだ。
そして、その上には先程の黒ずくめの男が乗っている。
その男は悠唯に向けて指をさしており、まるでそのタカに指示を出しているかのようだった。