姫の導-ヒメノシルベ-
 
 
 
全力で走っている悠唯だが、それよりもタカの翼の方が速いに決まっている。
 
 
 
「…っはぁ…っはぁ…っ…!」
 
 
 
胸が、肺が、焼け付くように熱い。
苦しくて堪らない。
 
 
だが、ふと気付けば、いつの間にかタカは悠唯の真上にいる。
 
 
 
『…姫よ。もう逃れることはできない。私と共に来ていただこう』
 
 
 
「…っ…!!」
 
 
 
ばさぁっと一際強く翼が羽ばたき、それと共に現れた強風に悠唯は吹き飛ばされる。
 
 
そのままずさっと地面に倒れ、全身に痛みが駆け抜けた。
 
 
その痛みに、思わずじわりと涙が浮かぶ。
 
 
 
「…っ…く…!」
 
 
 
なぜ。
 
 
 
なぜ自分が、こんな目に合わなければならないのか。
 
 
 
痛い。
 
 
痛い。
 
 
 
―――こわい…。
 
 
 
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