姫の導-ヒメノシルベ-
◇ ◇ ◇
「……はぁあ…」
深い深いため息を吐き出し、悠唯は空を見上げた。
ギラギラと照り付ける太陽が、とても憎らしい。
あまりの眩しさに、それを防ごうと腕を目の上にかざし、目を細めた。
本当に、何がどうなっているのやら。
あのあと目覚めたらスタルニーの腕も、逃げ回っていたあの町も、あの大きなタカも何もなかった。
そして、その代わりというように広がっていたのが、この砂漠。
もはや考える気力さえも残っていない悠唯は、手に持っていたコートを砂の上にひき、それに力無く座り込んだ。
「……喉、渇いた…」
眉を寄せながら、悠唯は呟く。
そう、ここは砂漠。水というものなど、無いに等しい。
だが、それでも悠唯は砂漠を歩き回り、必死に出口を探したのだ。
だが、そう簡単にそれが見つかるわけもなく。
「……もう、やだぁ…」
小さく震える声を絞りだし、悠唯は膝に顔を埋めた。
スタルニーは、あの穴を通れば現実世界に戻れると言った。
それは、自分を元居たところに戻してくれるという意味ではなかったのか。
そもそもこれは、夢ではないのか。
そう思い込もうとするのだが、感じる喉の渇きと飢え、そして疲労感。
それらはすべて、現実だということを思い知らせるかのように、悠唯を追い込む。
自分は一体、どうなってしまうのか。
それが重いわだかまりとなり、胸の奥につかえた。