姫の導-ヒメノシルベ-
 
 
 
その日も自分は、いつも通りに時を過ごしていた…―――
 
 
 
 
 
 
「悠唯ー!!」
 
 
 
「はーい」
 
 
 
母親に呼ばれ、少女――天原悠唯(アマハラユウイ)は階段を駆け降りた。
そして、声の聞こえたキッチンにひょこっと顔を覗かせる。
 
 
 
「なに?」
 
 
 
そう問えば、冷蔵庫の中を見ながら困ったように眉を寄せていた母親が、ぱっと顔をあげる。
 
 
 
「あのね、あなたに夕食の材料を買ってきて貰いたいのよ…。……頼まれてくれない?」
 
 
 
両手を合わせてエヘッと笑う母親に、悠唯はえー…と軽く口を尖らせる。
 
 
 
この母親は、まだ若い。見た目も年齢も、かなり若いのである。
 
 
 
その母親は34歳で、今の自分は17歳。
 
 
 
そう。
 
 
 
つまりは、この母親は17歳で自分を産んだのだ。
 
 
 
今の自分と、全く同じ年齢で。
 
 
 
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