姫の導-ヒメノシルベ-
 
 
 
そう考えれば、わずかながら複雑になる。
 
 
母親は17歳で結婚にまでこぎつけたというのに、その娘である自分は、未だに初恋もまだなのだ。
 
 
 
興味本位で付き合ったことはあるのだが、それはたったの一度。
そして、たったの一週間で終わりを遂げた。
 
 
 
しかも、振られて。
 
 
 
…自分が告白された側なのに、振られたのだ。
 
 
 
それもそれで、かなり複雑だ。
 
 
 
「…悠唯?」
 
 
 
「…っふぇ?…あ…、何?」
 
 
 
話の途中に考えに耽ってしまっていたのだろう。
 
 
黙り込んでしまった悠唯の顔を、母親が心配そうに覗き込んで来た。
 
 
 
それに驚き、悠唯はぱしぱしと目をしばたたかせる。
 
 
 
「……だめ、かしら?」
 
 
 
そう悲しげにいう母に、悠唯は思わずいいよと頷いてしまった…―――。
 
 
 
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