姫の導-ヒメノシルベ-
◇ ◇ ◇
こつこつと、ブーツの音が道中に響き渡る。
柔らかい春風を浴びながら、悠唯は息をついた。
「…最悪」
小さく呟いて、口を微かに尖らせる。
お使いを母に頼まれたはいいが、行きつけの店が開いていなかったのだ。
それを知った直後、母に連絡をしたのだが。
『…あら?言わなかった?今日はそのお店はお休みなの。だからそこじゃなくて、スーパーの方へ行けない?』
…とあっさり返されてしまい。
つい、「行けないこともないけど」と言ってしまったのだ。
そのあとは言わずもがな、あの母にとんとん拍子で話を進められ、今に至る。
「…はぁ…」
再び小さくため息をつき、悠唯はカチリと薄桃色の携帯電話を開いた。
その待受画面に表示された時刻に、悠唯は眉を寄せる。
17時―――つまり、午後の5時である。