姫の導-ヒメノシルベ-
 
 
 
急に背後から伸びてきた腕が、悠唯を羽交い締めにした。
 
思いもしなかった出来事に、悠唯の体は硬直する。
 
 
 
「…っな…に、するのよ…!?」
 
 
 
やっとのことで吐き出した言葉とともに、悠唯は無理矢理に首を後ろに向ける。
 
 
 
すると悠唯の目に映ったのは、全身黒ずくめの、フードを深く被った男だった。
 
その、いかにも怪しげな男から逃れようと、悠唯は激しく暴れる。
 
 
 
「…っ…離してよっ!!」
 
 
 
――…みつけた…――
 
 
 
地を這うような低い声に、悠唯の背筋がぞわりと冷えた。
 
その、耳に届いた…否、頭の中に直接響いた声が、悠唯の体の自由を絡めとる。
 
 
 
「…っ…や…だ…」
 
 
 
震える声が、悠唯の唇から小さく零れた。
 
 
 
なんだ、これは。
 
 
 
自分を捕らえる、この腕はなんだ。
 
体が凍り付くような、この声はなんだ。
 
 
 
みつけたとは、どういうことなのだ。
 
 
 
――…さぁ行こう。我らが主が、首を長くして待っておられる。そなたの、…セフィラータ姫のお越しを…――
 
 
 
「…っ…!」
 
 
 
ぞくりと、血の気が下がるのが感じられた。
 
 
 
怖い、と、心が叫び出す。体中が、がたがたと震え出した。
 
 
 
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