姫の導-ヒメノシルベ-
 
 
 
「…っや…だ…!!」
 
 
 
それに耐え切れず、悠唯は全力を振り絞って男をかかとで蹴飛ばした。
 
その拍子に悠唯の肘が男の肩に命中し、うっと呻く声と同時に体が解放される。
 
 
その勢いがあまり一度前のめりになった悠唯だが、直ぐさま体勢を調え駆け出した。
 
 
 
『…っ待て…!!』
 
 
 
背後に、今度はきちんと声を出した男の言葉が投げ付けられる。
それを必死に振り切り、脇目もふらずに地面を蹴った。
 
 
 
なんなんだ。
 
 
 
あれは、誰なんだ。
 
 
 
頭の中に直接響いて来た男の声を思い出し、悠唯は肩をぶるりと震わせた。
 
 
ドクドクと鳴り続ける警鐘が、悠唯を落ち着かせてくれない。
 
 
 
大丈夫。
 
 
 
そう、大丈夫だ。
 
 
 
家にこのまま、逃げ帰ればいいのだ。
 
 
 
家にさえ着けば母もいるし、警察にも連絡できる。
 
 
 
……連絡…?
 
 
 
「…っあ!」
 
 
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