恐怖 DUSTER
弥生の友人で、このようないたずらをできる間柄は、恵子、裕子、麻美の三人だけである。



里美と千恵もそうだが、今日は学校を欠席している。




「誰?三人じゃないなら、いま私に目隠しをしているのは誰なの?」



怖くなってきた弥生は、自分に目隠しをしている手を振りほどくためつかもうとした。



「ない!」



弥生がつかもうとしても、弥生に目隠しをしているはずの手が無いのである。



自分の目を隠している手の感触はあるのに、その手が無い・・・



「いゃー!」



弥生は、叫びながら実態の無い手を振りほどこうともがいた。




「どうしたの、弥生!」



弥生の、ただならぬ叫び声に先に行っていた三人は、急いで弥生の元に走った。



「弥生、どうしたの?落ち着いて!」




突然、体中を震わせて狂ったように体を動かす弥生に驚く麻美たち。




「いゃー!離して!離してったらー!」




訳の解らない事を叫んでいる弥生の姿は異常であった。



「弥生、どうしちゃったの?」



今にも泣きそうな表情で弥生を落ち着かせようとする恵子。


「だぁ~れだ・・・」


「だぁ~れだ・・・」


「だぁ~れだ・・・」


「だぁ~れだ・・・」



弥生の耳元では、何度もこの言葉が繰り返しささやかれていた。




「いゃー!手をとって!この手をとってー!」




麻美たちは、弥生の言葉が理解できずにいた?




三人から見て、弥生はしきりに自分の顔のこめかみあたりを手で振り払っているだけなのである。
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