恐怖 DUSTER
「弥生の心はね、弱いのよ!あの暗闇の場所に閉じ込められていたのも私達と違って心のカケラだったんだから、もし万が一前の弥生の心が残っていたら再び入れ替わられるかもしれないんだから!」


そう叫ぶ麻美の瞳には涙が浮かんでいた。


弥生は麻美の激しい言葉を受け、あの暗闇の場所の恐怖と麻美が自分に対する思いの強さを思い起こされた。


「ご、ごめんなさい・・・」


弥生は、麻美の思いを知り謝罪した。


「まあまあ、弥生もちゃんと麻美の言う事を理解しているから大丈夫だって!」



その場の重い空気と、里美の怯えを打ち消そうと千恵が弥生をかばうように言った。


千恵の言葉をフォロするように、里美も千恵の後ろから何度も無言でうなずく。


しかし、麻美の表情は変わらず涙目で弥生を見つめていた。


その表情は、危険な場所で遊ぶ子供をたしなめる母親のようであった。


「ごめんなさい・・・麻美、本当にごめんなさい・・・」


弥生は何度も誤るたびに、その場の空気が重くなっていく。


千恵もこの場の空気をどう変えていけばいいのか苦慮した。


・・・麻美の気持ちも解らないではない。たしかに弥生の心の思いは自分達とは違って弱いのだから・・・


・・・麻美の言うとおり、もしも前の弥生の心がカケラでも、あの暗闇の場所に残っていれば、いつ何時入れ替わられるかもしれないのだから・・・


千恵としても麻美の気持ちが理解できるだけに言葉に詰まってしまった。



・・・それにしても、なぜ麻美は弥生にあの人の事をまだ話さないのだろう・・・?



・・・そして、それ以上に、なぜあの事を言わないのだろう・・・?



千恵の心にも、麻美に対する疑念の思いが渦巻いてくるのだあった。
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