恐怖 DUSTER
弥生の落ち込む姿を見て、麻美は自分が必要以上に感情的になっている事に気がついた。

・・・私は、弥生を責めてるんじゃない・・・


・・・弥生の心は弱いから・・・


・・・もっと強くならないといけないのよ・・・


・・・弥生は、私たちとは違うから・・・


重苦しい空気の中、里美が千恵の背中から顔を出して弥生に向かって言った。



「・・・あのね、麻美は今の弥生を失いたくないのよ。弥生をあの暗闇の場所から解放する事だけが麻美の望みだったんだから。」


「だからね、弥生に私達の思いを知ってもらう事で心を強くして、前の弥生の心や次に来る入れ替わりにも対抗してもらいたいと思っているから、つい怒ったように言ってしまうのよ・・・」



口数が少なく自分からは意見を言わない里美が、麻美の思いを代弁している姿を見て、前の里美からは思いもよらない、入れ替わった今の里美の心の強さを知り千恵も麻美も驚いた。


・・・良かった、今の里美の心はしっかりしている・・・


千恵は安堵の思いに胸を撫で下ろした。



「ねぇ、千恵もそう思うよね?」



里美の突然の同意を求める言葉に千恵は戸惑った。



「へっ?あぁぁ、もちろん!里美の言うとおりよ」



入れ替わっても、千恵頼みの姿勢は変わらずにいる里見であった。




里美と千恵のやり取りを見ていて、麻美と弥生の表情も明るくなっていく。



「弥生・・・ごめん。私、強く言いすぎた」


「麻美が誤る事じゃないよ。ちゃんと聞いていなかった私が悪かったんだから」



その場の重苦しかった空気も明るく変わっていった。











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