恐怖 DUSTER
麻美は、弥生に改めて確認するように聞いた。


「弥生も、私達が体験した思いを、ちゃんと知ってくれたわよね?」


「うん、千恵の思いも里美の思いも、ちゃんと心に留めたから」


「ちょっと!私の思いは?」


麻美は、弥生の口から自分の名前が出ない事に不満を感じたように言う。


弥生は微笑みながら自分の胸に手をあて優しく麻美に向かって言った。


「大丈夫よ・・・麻美の思いも、全部ここにあるから・・・」


そう言いながらも、弥生の心の中は複雑であった。


・・・本当に、全部なの・・・?



麻美も弥生の言葉を嬉しく感じていながらも複雑な思いをしていた。


・・・いいの、弥生は全部受け入れなくてもね・・・




その時、麻美の携帯の着メロが鳴り響いた。


「あっ!ちょっとごめん。たぶん裕子たちだと思うわ」


・・・裕子・・・


弥生は今の今までその存在すら忘れていた裕子と恵子の事に思いをめぐらせる。


そして麻美が携帯に応対している間に、弥生は千恵と里美に問いかけてみた。


「ねぇ?・・・裕子と恵子の誕生日はまだだけど、やっぱりあの二人も7年前の事故によってあの暗闇の場所に心が閉じ込められているの?」


突然の弥生の質問に千恵も里美も戸惑い答える事を躊躇して、二人とも視線を携帯で会話中の麻美に向ける。


その二人の行動を見て弥生は思った。


・・・やはり、麻美は何かを隠しているんだ・・・


・・・私の知らない何かを・・・


・・・裕子と恵子に関わりがあることなの・・・?


弥生の中で麻美に対する疑念がさらに強くなっていくのであった。





< 109 / 190 >

この作品をシェア

pagetop