恐怖 DUSTER
「うん・・・わかってるって!・・・うん・・・」


麻美は自分達とは少し離れながら、まだ携帯の相手と話をしている。


弥生は、麻美に気取られないように千恵に向かって続けざまに強い口調で言った。


「千恵、答えて!裕子と恵子の入れ替わりは?」


「裕子と恵子も、千恵たちと同じような思いがあるの?」


「そもそも、あの人って誰なの?」


千恵は弥生の迫力に押され、戸惑いながら視線を麻美の方に向ける。


弥生はその視線をさえぎるように千恵の目の前に立ちながら、さらに強い口調で問いかけた。


「お願い千恵、教えて!」


「え、え・・・あ、その・・・」


後一押しで、千恵は自分の知りたい事を話してくれる、そう弥生が思った瞬間!里美が千恵をかばうように弥生と千恵の間に割って入ってきた。


「えっ?!」


里美の行動に同時に驚く弥生と千恵。


「弥生。いまあなたが質問した事は、私たちからは言えないのよ。どうしても知りたかったら、自分の声で麻美にはっきりと聞きなさい!」


その時の里美の言葉は、前の里美の記憶の中にも無い、とても強くてはっきりとした初めての里美自身の主張であった。


「さ、里美・・・」


初めての里美の主張に驚いた弥生は、それ以上問い詰める事はできなかった。


そして里美の初めての主張は続いていく。


「いい、弥生よく聞いて?弥生は麻美に対して疑念を感じてはいけないのよ!」


「麻美は、あなたを心の底から大切に思っているのだから」


「少しでも麻美に対して疑念を感じているなら、その疑念をはっきりと麻美に言葉にして言いなさい!」


「そうしないと、疑念が弥生の心を弱くしてしまうから・・・」


「それを一番望まないのは麻美なんだよ!」



里美の迫力に、弥生は言葉を失い沈黙した・・・




自分の目の前に立ち、弥生に激しく強い口調で主張する里美の後姿を、千恵は呆然としながら見つめていた・・・
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