恐怖 DUSTER
弥生は、あの人に該当する人物を、思い付くことができず思い悩んでしまった。


時おり麻美に視線を向けると、麻美は私の答えを待っているのか自分から話そうとはしてくれなかった。


弥生は、その麻美の視線がまるで自分に降参を求めているように感じてしまい、なかば意地となり自身の思考を精一杯張り巡らせた。


「あっ!」


その時、弥生の思考に思い当たる人物のイメージが呼び起こされた。


・・・自分達が生まれる前から入れ替わりの事実を知っていて、私達の身内では無いのに、それでも私がよく知る人物となると・・・!


・・・そうか!・・・


弥生は、今度の答えこそ正解であろうと自信満々に麻美に向かって言おうとした、その時・・・


麻美が、まるで弥生の答えを予見していたかのごとく、間髪要れずに言った。



「言っとくけど、先生でも無いからね♪」



弥生の答えと自信は瞬時に消え去ってしまった・・・



「麻美~意地悪しないで教えてよ?」


半べそ状態の弥生を見ながら麻美は優しく言う。



「あの人はね・・・ほら、あの人よ・・・」



言葉と同時に麻美は右手を横に伸ばし指差す動作をしていった。



その麻美の指し示す先には、こちらに向かってくる裕子たちがいた。


「ど、どういうこと?裕子が、あの人なの・・・?」


麻美は呆れながらも微笑み弥生に言う。


「裕子なわけ無いでしょ・・・あの人は裕子の隣にいるわ」


再び麻美が指し示す方に、弥生は視線を向け確認した。


「け、恵子!」


驚いた弥生は麻美に目をやると、否定の言葉を言わない麻美が小さく静かにうなずいた。


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