恐怖 DUSTER
・・・そ、そんな・・・


・・・嘘でしょ・・・


あまりの出来事に状況を理解できずに戸惑う弥生。


「で、でも!恵子が私達の入れ替わりに深く関わる「あの人」だなんて信じられないわ!」


麻美は、弥生の驚きを当然の事と認識しているように冷静に話し続ける。


「そうでしょうね。恵子が「あの人」だなんて弥生が信じられるわけないわよね」

「でもね、私に入れ替わりの方法を、教えてくれたのは恵子なのよ」

「恵子が!」


麻美の言葉によって、弥生は訳の解らない状況に落ちていく。


「・・・恵子もね、あの悲惨な事故の時に私達と同じようにあの場所にいたのよ」

「恵子も被害者なの?・・・心に大きな傷を受けてしまったの?」

「・・・恵子は被害者じゃないし、心に何も傷を受けて無いわ」

「被害者じゃなくて心に傷も受けていない?!・・・どういうことなの?」

麻美は恵子の事を弥生に離すのを、どこか躊躇しているようであり、言葉を選びながら話しているように感じる。

「恵子はね・・・私達とは全く違うのよ・・・」

奥歯に物を挟んだような麻美の言葉に弥生は、初めて怒りに似た感情をあらわにした。


「麻美、全部話して!私に隠し事をしないで!」


弥生に詰め寄られて、戸惑いと焦りの表情を見せる麻美。


その時突然!弥生の視線が暗くなり何も見えなくなった。


弥生は突然の暗闇の中、瞬時に自分がおこなった前の弥生の恐怖の記憶が蘇り体中が震えだしていく。


・・・いや!・・・


・・・暗闇は、もう嫌!・・・


前の弥生の恐怖と、自身が記憶している閉ざされた暗闇の場所のイメージが沸き起こり、弥生はパニック寸前になっていた。


「だぁ~れだ!」

弥生の心情とは裏腹に、明るい声が弥生の耳元で響いていく。


その声に、弥生は恐怖した・・・


弥生の目をふさぐ声の主は、恵子だったのである・・・


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