恐怖 DUSTER
「でもね・・・大勢の人間がいるから、城内の生き物や植物などはすぐに食い尽くされてしまい残る食料となるものは、人しかなくなってしまったのよ・・・」


「城の中で殺し合いが広まるのを恐れたお侍達はそれを許さず、禁を破った者はその場で首を切られたわ、そして切られた者は城内のいる者の食料になったの・・・」


「だから城内にいる人達は、じっと誰かが死ぬのを待つようになったの・・・」


「今にも死にそうな人の周りには、大勢の人だかりができるのよ」


悲惨な光景が弥生の脳裏に映し出され気持ちが暗くなっていく。


「それからね・・・とうとう私の周りにも人だかりができるようになってしまったの・・・」


「飢えて痩せ衰えても頑張れたのは、お菊ちゃんに会えると思えたから・・・」



「でも・・・お菊ちゃんとは、全く会えなくなってしまい、私の気力も尽きかけていたの、もうどうなってもいいと・・・」


「その時ね・・・私の周りにいた人だかりの中の一人の子が、突然どこからか飛んできた流れ矢に当たって死んでしまったのよ!」


「その途端、周りの人達はその子に群がりむさぼり食べ始めたの、引きちぎられたその子の体を奪い合いながらね・・・」


「そしたらね、引きちぎられたその子の左手首が私の所に飛んできたの・・・」


「私はもうどうなってもいいと思っていたから・・・お菊ちゃんに会えないなら、人の心を保っている理由は無いと思ってしまったから・・・」


「その左手首を、食べることに決めたわ」


「えっ?!」


先ほど恵子は人を食べなかったと言ってたのに、話しの展開が変わり戸惑いを見せる弥生。


恵子は弥生の反応を楽しむかのように微笑んだ。



「そして、私はその左手首に食らいついたの・・・」



「その時にね・・・声が聞こえてきたの・・・私を探すお菊ちゃんの声が・・・」












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