恐怖 DUSTER
「池に映ったその姿はまるで餓鬼のようだった・・・」

「こんな私を見られたら、お菊ちゃんに絶対に嫌われると思ったの」


恵子にとって、お菊は憧れの対照であり、友達でいられることが何よりも幸せなのである、そのお菊に嫌われる事は死ぬ事より辛い事であった。


「だから私は、お菊ちゃんに見つからないようにとっさに茂みの中に隠れたわ」


「お菊ちゃんは池のすぐそばまで来ていて、急に私の声が聞こえなくなったから心配して何度も私の名を呼び続けてくれた・・・」


「でも・・・私は答えることはできなかった・・・」


「・・・茂みの中で息を殺し、お菊ちゃんが立ち去ってくれるのを祈りながら隠れ続けたの・・・」


その恵子の祈りは叶う事は無く、逆に突然声がしなくなった事により、お菊の不安は大きくなってしまい、茂みの中までも恵子の存在を捜し求める行動を誘ってしまった。


「お菊ちゃんは深い茂みの中を、私の声を叫びながら探し続けてくれた・・・」


「そしてとうとう、茂みの中で体を伏せて隠れている私のそばまで来てしまったの」


「私は焦ったわ、そして祈りながら思ったの・・・」


「どうか、お菊ちゃんが私に気づきませんように・・・」


「お菊ちゃんが、今の私を見たら絶対に嫌う・・・」


「お菊ちゃんに嫌われたくない!」


「それだけは絶対に嫌!」


「嫌!」


「嫌!嫌!嫌!嫌!嫌!嫌!嫌!・・・そう何度も心の中で叫んだわ・・・」



「その時・・・お菊ちゃんの後ろのすぐ足元で、伏せて隠れていた私のお腹がなってしまったの・・・」



「お菊ちゃんは、その音に気づいて振り返ろうとした・・・・」



「・・・だから・・・私はとっさにお菊ちゃんに飛びかかり・・・」



そう言うと、何故か恵子は押し黙ってしまった・・・?



しばらくの沈黙の後、どうしても話の続きが気になる弥生は意を決して問いかけた。




「・・・と、飛びかかってどうしたの・・・?」











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