恐怖 DUSTER
「えっ!・・・今なんて・・・?」


予想だにしない恵子の言葉に弥生は驚いた。


弥生を見つめる恵子の瞳には、魔性の輝きに満ちていた。



「嬉しかった♪嬉しかったのよ♪」



「だってそうじゃない!私はお菊ちゃんに憧れ、お菊ちゃんのようになりたいといつも思い続けていたのよ!」



「それがある日突然に、その憧れの人に入れ替われたのよ♪こんなに嬉しい事はないじゃない♪」



異様にはしゃぎながら、嬉しそうに話す恵子の心が理解できずに弥生は戸惑う。



「弥生だって憧れのモデルや女優に、ある日突然入れ替われたら嬉しいでしょう?



突拍子も無い恵子の例え話に、弥生は返す言葉が見つからなかった。



「ねっ♪ねっ♪絶対そうだよ!」




・・・・恵子、どうしちゃったの・・・?


先ほどまでは、お菊に対して慈愛の思いを強く表していた恵子が、今はまるで別人のように豹変したことが理解できない弥生。


「ねっ♪ねっ♪弥生もそうだよね?」


しつように同意を求める恵子の態度に気味悪さを感じた弥生は別の話題を言った。


「と、ところでなんでお菊ちゃんは・・・お菊ちゃんと入れ替わった恵子は、飢えた人達に食べられなかったの?」


同意をしてくれない弥生に不満の表情を少し見せながらも恵子は答えた。


「それはね、お城の中のルールがあるから食べられなかったのよ」

「ルール・・・?」

「そう、ルールね!前にも言ったでしょ。お城の中では誰かを殺したりしたら首を切られるって」

「だから、食べる時はその人間がちゃんと死んだか確認してからじゃないと食べる事はできないのよ」


「お菊ちゃんと入れ替わった私は気を失っただけだから食べられ無かった」


「それだけの事よ・・・」
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