恐怖 DUSTER
「恵子は汚くなんかないよ!」


「えっ?」


「だって・・・恵子は言ったじゃない。心を壊した子を探し出して入れ替わっていったて・・・」


「それは、恵子が相手の心を恐怖で壊してから入れ替わったんじゃないてことでしょ?」


「・・・そうだけど・・・?」


「だったら少なくとも、その入れ替わった子の家族や友人達は救われたんじゃない?」



「・・・救われた・・・?」


「そうよ、恵子が入れ替わらなければその子はずっと心が壊れたまま意識を取り戻す事もなかったてことでしょ。例え心が恵子でも家族や友人達は意識を取り戻したことですごく喜んだでしょうから」



恵子は過去の記憶を呼び覚まし、自分が入れ替わった時の事を思い起こしてみる・・・


たしかに弥生の言うように、自分が入れ替わってから意識を取り戻した時には、どの家族も涙を流し、みな笑顔で心から喜んでいた・・・


「恵子は、私達とは違うんだよ・・・私達は自分と同じ心を持つ子を・・・恐怖で強制的に心を破壊して、無理矢理入れ替わってしまったんだから・・・」


あの暗闇の場所から解放されたいという強い思いから、前の弥生の心を破壊してしまった事に弥生は罪の意識を感じていた。


「恵子の入れ替わりは、みんなを幸せにしたんだよ」



「・・・みんなを幸せにした・・・」



そんな事は、考えた事も無かった。


長い時を繰り返し入れ替わってきた自分を、まるで寄生虫のような嫌悪感を感じ続けて生きてきた恵子にとって、弥生の言葉は心が救われるような思いであった。



「お菊ちゃんのことだってそうだよ。恵子はお菊ちゃんを怖がらせようとしたわけじゃなく、恵子は自分の姿を見られたくなかっただけなんだから」



「恵子は、お菊ちゃんのようになりたいと強く思っていたけど、お菊ちゃんと入れ替わってやろうとは思わなかったでしょ?」



無言でうなずきながら、恵子は自分の心が軽くなっていくのを感じていた。

誰かと入れ替わるたびに、心に絡み付いていた重苦しい罪悪感という鎖がゆっくりとほどけていくようなそんな感じを・・・
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