恐怖 DUSTER
「・・・それでね、弥生に頼みたい事があるのよ」


「頼みたい事・・・?」


「私ね・・・誕生日を迎えたら皆とお別れすることにしたの・・・」


恵子に対する複雑の思いの中、突然の別れと言う言葉に弥生は全てを忘れ驚いた。


「ど、どういうこと?」


静かな動作で視線を弥生に向けながら、優しく微笑み恵子は言う。


「・・・見つけたの・・・新しい体を・・・」


「その子はね、火事でお母さんと弟を亡くしたショックで心を壊してしまったの、今も病院のベットで眠り続けているは・・・」


「そ、その子の心は?・・・その子の心は、あの暗闇の場所にいないの?」


恵子を引き止めたい思いと、その子の心の安否を心配する思いが複雑に交差していく。


「・・・その子のお見舞いに行って、その子の心に触れてみたけど、その子の心は消えかかっていたわ・・・」


「消えかかっていた・・・?」


「私はね、入れ替わる時には相手の心に問いかけるのよ。再び意識を取り戻し生きていくか、全ての記憶と体を私に明け渡すかってね!」


心に多大な苦しみを受けた時点での恵子の二つの選択肢に疑問を感じる弥生。


その条件であれば、誰もが後の選択を選ぶであろう。


「そんな問いかけだと、ほとんどの子は後の選択を選ぶんじゃないの・・・?」


「そうね、そのとおりよ。こう問いかけると皆、私に体を明け渡してくれるのよ♪」


あっけらかんと答える恵子に呆れながらも、長い年月を何度も入れ替わって来た恵子のしたたかさを感じながらも、恵子に対する疑問が強くなっていた。


「ねぇ?恵子も私達と同じ、あの時の事故に遭遇してしまったの?」


「あれ?私、言わなかったっけ?・・・麻美たちからも聞いていないの?」


「・・・恵子の事は・・・私達とは違うって事だけしか聞いてないのよ・・・」



麻美たちが自分の事を特別な目で見ている事に寂しさと疎外感を感じ、落ち込む表情を恵子は見せていく。




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