恐怖 DUSTER
「で、でも前の恵子は何も反応しなかったのに、どうやって選択させたの?」


そう問いかけられ、恵子が弥生に視線を向けた瞬間、弥生の背筋に寒気が走った!


「何も答えないのは、消えていく事を承諾したと判断するのよ」


・・・そんな・・・!



恵子の理不尽とも思える答えに、弥生は恵子の奥底に潜む魔性の存在を感じずにはいられなかった。


・・・なんだか、恵子は生に執着しているようにも思える・・・


・・・お菊の心を消した時も、恵子はお菊の心を食べたと表現している・・・


・・・もしかしたら、恵子はお菊の心を食べた事により二人の心は一つとなり共に生き続けているとでも思っているのだろうか・・・?


・・・そうだとすれば、恵子は永遠に入れ替わり続けていくのかもしれない・・・?


・・・入れ替われる、器があるかぎり・・・


「それでね、私が恵子となって意識を回復した時に恵子の母親はすごく喜んだのよ。何度も何度も恵子の名前を呼んで嬉しくて泣いていた・・・」


神妙な顔で話していた恵子が突然表情を和ませる。

「くす♪」

恵子は何かを思い出し笑ったようだ。


「いつもその瞬間の時には不思議な感覚になるのよ、私が入れ替わった後にね、私だった38歳のベテラン看護士が一緒に喜んでくれたのよ♪」



「あっ!そうか、恵子の存在と記憶だけ脱け出して、その後は新しい心が自分に何事も無かったように存在しているんだっよね?」



「そうよ。私の記憶は無いけど、私が恵子を担当して看病していた時の記憶は残っているから、その後もよく話を聞かされたわ。私が経験した記憶を何度もね♪」


よほどその時のことが面白かったのか、恵子は思い出し笑いを幾度となくして、その時の事を話し続けた。



「ね、ねえ?麻美とは・・・?麻美との出会いは?」


話の核心になかなか進まず、業を煮やした弥生はたまらず恵子に問いかける。


「あっ!ゴメン。そうだよね、麻美の事を話さなければね」



やっと麻美の話題になり弥生は安堵した。
< 155 / 190 >

この作品をシェア

pagetop