恐怖 DUSTER
「それでね。麻美の病室の中に入った私は、不思議な光景を見た・・・と、いうか目をつぶらないと見えないんだから?・・・う~ん・・・なんて言ったらいいんだろう?」


考え込む恵子に、じれったさを感じた弥生はたまらず言った。


「細かい表現はいいから、話を先に進めてよ!それで不思議な光景ってなによ?」


珍しく積極的に問いかけをしてくる弥生に恵子は少し驚いた。


「・・・だから紐・・・私の中から出ている光の紐が病室で寝ている麻美の方に続いていたのよ」


恵子の言う事が本当であるのなら、たしかに不思議な光景である?


「それで、どうしたの?その光の紐の正体はなんなの?麻美は意識は無かったの?」


好奇心で心がいっぱいになっている弥生は恵子に立て続けに問いかける。


「ちょ、ちょっと待ってよ!そんなに一度に聞かれても答えられないわよ!」


「あっ!ご、ごめん・・・そ、それでどうなったの?」


半ば呆れながらも、恵子は弥生の問いかけを一つずつ答えていった。


「はい、はい・・・それでね。私は、寝ている麻美に近づいて光の紐の行方を探ったのよ。そしたらね、光の紐は麻美の中に入っていたのね。私と同じように・・・」


弥生は、その状況を想像しながら一つの事に気がついた。


「つまり、その光の紐で恵子と麻美は繋がっていたのね!」


「そういうことになるわね」


「でも、なんで?・・・その光の紐はいったいなんなの・・・?」


そう弥生が言うと同時に、恵子の視線が強く自分を見つめる。


「あっ!はい、はい、一つずつだよね?・・・はい、どうぞ♪」


弥生の反応が面白かったのか、恵子は強めた目元を緩めながら言った。


「私は、麻美から出ている光の紐の辺りをそっと手で触れてみたのよ・・・」


「・・・そしたらね・・・」


そう言いかけながら、沈黙してしまった恵子に弥生が哀願するように言う。


「そしたら・・・なに・・・?」


その反応に満足げに微笑みながら恵子が答えた。




「・・・麻美に触れた瞬間、寝ているはずの恵子の声が聞こえてきたのよ・・・」
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