恐怖 DUSTER
「・・・麻美の声が聞こえてきた?・・・麻美は起きていたの?」


「そうじゃなくて・・・聞こえてきたのは、寝ている麻美ではなく心の奥深くに封じ込まれていた、今の麻美の声だったのよ!」


「封じ込まれていた麻美の声?・・・恵子は封じ込まれている心とも会話ができるの?」


恵子は弥生の問いかけに、大げさに手と首を振りながら否定する。


「そんなことはできないわよ。私は、恵子の前に何度も心を入れ替わってきたけど、こんなことは初めてだったのよ」


「私が手を触れると麻美の声は聞こえてきて、手を離すとその声は聞こえなくなるのよ、まるで糸電話みたいにね」


・・・恵子の能力でなければ、麻美の能力なのだろうか?理不尽に閉じ込められた怒りと憎しみにより、そのような特別な能力を麻美は得たというのだろうか・・・?


そう弥生は思いを深めながら、恵子に視線を向ける。


・・・それもありえないことではない。現に目の前にいる恵子は人であらざる能力を使い何百年と生きているのだから・・・



「・・・どうかした・・・?」



弥生の視線を感じ、恵子が問いかけた。



「えっ?あっ!なんでもないの・・・」



弥生は、恵子や麻美の事を悪意のある特別な存在と思う自分に嫌悪感を感じていた。



・・・私自身も、人にあらざる所業で今現在ここに存在しているのに・・・



弥生は、恵子や麻美に感じた悪意のある特別な感情を打ち消して行った。




「私も最初はその状況に驚いたんだけど、やがてその声の主が麻美の中にいるもう一人の麻美だと気がついたのよ、そして彼女と何時間も話したわ」


「寝ている麻美は起きなかったの?」


「起きなかったわよ♪・・・まぁ、お互い声を出して話している訳じゃないし、ただの一度も寝ている麻美は起きなかったわよ」


「・・・声を出していない・・・?」


「そうよ。手を触れる事によってお互いの声がはっきり聞き取れるのよ。接触テレパシーみたいなものね♪」


恵子の言葉がいまいち理解できずいた弥生ではあったが、話を先に進める事にした。



「それで麻美は、なんて言っていたの・・・?」

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