恐怖 DUSTER
「麻美は凄い子ね!・・・あの子は今現在自分がどういう状況にいるのか、再確認するように何度も私に質問してきたのよ。私がどこにいて、どのような状況で自分と会話しているのか?とかね・・・」


自分の場合とは違い、冷静に対処した麻美に感心する弥生。


「それで、恵子はなんて答えたの?」


「・・・私は、麻美の質問の一つ一つを答え続けていったわよ」


「・・・毎日ね・・・」


恵子の言葉に驚いた弥生は、慌てて問いかけた。


「毎日?・・・毎日てどういうこと・・・?」


「どういうことって?・・・言葉どおりよ。毎日夜になったら、麻美が寝静まってから私は麻美の病室に行き、心の奥底に閉じ込められているもう一人の麻美と話しを続けただけよ。・・・だって、寝ている麻美は昼間でも何も話してくれないから・・・」



「そ、それでどんな話をしたの・・・?」


恵子は少し考え込んだ後、思い出しながら言った。


「いろんな事よ。麻美の質問だけでなく、私の質問にも答えてもらったり、なんの事は無いただの世間話をしたりとかね・・・」



「・・・入れ替わりは・・・」



弥生が思いつめたような表情で問いかけた。



その弥生の一言で、恵子の表情も瞬時に強張っていき、静かに答えた。



「・・・言ったわよ・・・恵子との入れ替わりのことだけをね・・・」



・・・恐らくその言葉によって麻美は入れ替わる事に希望をみいだし、そして実行したのであろう・・・



そしてそれだけでなく、私や千恵や里美らも入れ替わらせていって、最終的には裕子も入れ替わらせていくんだと弥生は思った。



・・・麻美は、自身と同じ境遇である仲間を求めていたんだ・・・



・・・あの悲惨な事故によって、封印されて忘れられていた存在である、数少ない仲間達を・・・



自分の知らなかった麻美の思いを知ることができて、弥生の心は晴れやかに心地良くなっていくのであった。
< 164 / 190 >

この作品をシェア

pagetop