恐怖 DUSTER
麻美は二人を見つめ哀願するように言った。



「私だって弥生を叩きたくない。でも、時間が無いの。」



「早く弥生を正気に戻して、名前を言わせないと・・・」



言葉に詰まる麻美。



「麻美、解った。解ったから早く弥生を助けよう!」



裕子は、麻美の気持ちを察して言った。



恵子も無言でうなずく。



麻美は、弥生の方を向き頬を叩いた。



パシッー!



裕子と恵子も弥生に向かって大きく声をかける。



バシーッ!



繰り返し麻美は弥生に呼びかけ、涙ながらに頬を打ちつけていく。




それでも、弥生は正気に戻らず裕子や恵子の声も届かなかった。




麻美の目には、弥生の後ろにいる女の体が徐々に形を崩していき、弥生の体にゆっくりと溶け込んでいく姿が映る。




女は無言になり、弥生の目を両手で隠す体勢のまま弥生と同化していくのである。




麻美は、弥生と女の子の姿を見つめながら思った・・・





「こ、このままじゃ駄目・・・駄目よ!」

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