恐怖 DUSTER
「ねぇ、私の声が聞こえるよね?戻ってきて。私の声がする方に戻ってきて!」



麻美は、弥生を両手で抱きしめながら繰り返し弥生の耳元に向かって言い続けていた。



「ねぇ、麻美!弥生はどうなるの?もしかして、弥生はもう・・・」



「大丈夫!もう少し、もう少しで元に戻るから!」



不安げに口にした裕子の問いかけを、麻美は中断して力強く言い切る。



「本当!本当に弥生は元に戻るの?」



恵子は、麻美の言葉を聞き、ほんの少しだけ恐怖を忘れる事ができた。



「本当よ!あと少しで弥生は元に戻れるの、本来の弥生にね・・・」



「ううぅぅぅぅ・・・・ぅぅあああぁぁぁ・・・ぁぁぁぅぅぅぅ・・・」



弥生の呻き声が徐々に小さくなっていく。



赤ん坊をあやすように優しい声で、麻美は弥生に声をかけ続ける。



その姿を見て、裕子と恵子も麻美と弥生の元に集り、優しく励ますように声をかけた。




やがて、弥生は不気味な呻き声を上げる事も無くなり麻美の胸の中で眠るように静かになった・・・


恵子は、心配そうに弥生を見つめ、麻美に再度確認するように問いかける。



「ほんとに、本当に弥生はもう大丈夫なの?あの女はいなくなったの?」



麻美は、弥生を少し起こし上げながら顔を確認する。



「大丈夫よ!あの女の子の手は、もう弥生の目を隠してないわ」



「あの女は、どうなったの?」





裕子の問いかけには、麻美は答えなかった・・・?


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