恐怖 DUSTER
「うぅぅ・・・うぅぅぅ・・・」


不気味な呻き声ではない弥生の声が聞こえた。


弥生は意識を取り戻し、ゆっくりと閉じていた両目を開けていく。


裕子たちは弥生の表情に注目した。


「・・・こ・・・ここは・・・どこ・・・?」


弥生が小さな声でつぶやいた・・・


麻美は、弥生の顔を自分に向けて、強い口調で答える。


「弥生、!もう大丈夫だよ!戻ってこれたんだよ。もとに戻ったの!」


「・・・も・・・もとに戻った・・・?」


「そう、もとに戻れたの、もう心配しなくていいからね!」


「わ・・・わたし・・・も、もとに・・・戻った・・・」


まだ意識が、もうろうとしている弥生の手を取り恵子が叫ぶ!


「や、弥生なのね!もとに戻れたのね。良かった!本当に良かった!」


「弥生!め、目は見えるの!」


裕子は、弥生の目の前に両手をかざして確認するように聞いた。


「・・・め・・・目、見える・・・見えるよ・・・」


「本当に!本当に見えるのね。良かった、良かったね弥生」


恵子は泣きながら、弥生の目の回復を喜んだ。


「弥生!あの女は?後ろにいたあの女はもういない?」


裕子の問いかけに、一旦目を閉じる弥生。


「・・・い・・・いないよ・・・もう・・・いない・・・」


裕子は確認するように麻美に視線を向ける。


麻美は、しばらく弥生を見つめていたが、裕子に笑顔を向けて言った。


「あの女の子の、姿も気配も無くなったわ、もう本当に大丈夫よ!」


麻美の答えを聞いて、裕子の瞳から涙が溢れてきた。


弥生は、裕子のに右手を差し出して、裕子の瞳から溢れ出る涙を手で拭った。


「ゆ・・・裕子・・・な・・・泣かないで・・・」


裕子は、弥生の手を握り締め言った。


「この涙は嬉し涙だから泣いてもいいの!弥生、本当に良かった!」


「ずるい!弥生、私も泣いてるよ!私も慰めてよ」


「け、恵子は、いつも泣いてるから・・・」


「や、弥生だ!間違いなく弥生が戻ってきてくれたんだ!」



安堵と嬉しさのあまり、恵子と裕子は再び泣き出してしまった。

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