恐怖 DUSTER
「そ、その言葉・・・私、知ってる・・・」


弥生の中で、記憶の全てが走馬灯のように思い出されていく。


「お、思い出した・・・」


「7年前・・・私が眠っていたら、何か真っ黒な霧のようなものに突然包まれて、気がついたら、あの真っ暗な所にいたの」


「それからずーっと、あの真っ暗な所に閉じ込められて、私は泣いていた・・・」



「暗くて・・・怖くて・・・悲しくて・・・何度もお母さんの名前を呼んだわ・・・」



「そこでは、日にちも時間も解らなかったけど、何度もお母さんに助けてと叫び続けていた・・・」


「だけど・・・誰も助けてくれなかった・・・誰も答えてくれなかった・・・」


「私は、泣くのにも疲れ果て、それから考え続けたの・・・」


「どうして、私はこんなに暗くて寂しいところに一人で閉じ込められているのか・・・?」


「どうして、誰も助けに来てくれないのか・・・?」


「どうして、誰も私の声にこたえてくれないのか・・・?


「どうして、私がこんな目に遭わなければならないのか・・・?」


「どうして?どうして?どうして?どうして?」


「どうして?どうして?どうして?どうして?」


「なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?」



「答えは見つからなかった・・・」


「そして、その思いを何度も繰り返し続けたの・・・」


「何度も、何度も同じ思いを続けたの・・・」



とても辛く悲しい記憶を呼び起こし、弥生の瞳からも涙が溢れていく。






「でも・・・」



「でもね・・・一度だけ、誰かが答えてくれたの・・・」



「・・・一言だけ・・・」



「もう、大丈夫だよ・・・て・・・」


「あの時の・・・あの声・・・麻美だったの・・・?」




麻美は、弥生に優しい笑顔を向けながら、無言でうなずいた。
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