恐怖 DUSTER
「弥生の誕生日は遅生まれの1月だよね」


唐突に今までの話の内容と異なる言葉を問いかけられ弥生は戸惑った。


「えっ?そ、そうだけど?」


麻美は弥生の戸惑う様子を見て微笑んだ。


「ねぇ、弥生覚えている?」


「えっ、何を?」


「7年前のクリスマスの日に私に・・・いえ、新しい私に電話してくれた事を」


「クリスマス・・・?」


・・・7年前のクリスマスの日に麻美に電話・・・?


「あっ!」


弥生は思い出した。7年前のクリスマスの日、たしかに自分は麻美に電話をかけた・・・


「うん、電話したよ!私も病院を退院してからいろいろあって、麻美のところへお見舞いも一度も行けなくて・・・」


弥生の中で忘れられていた記憶が蘇る。


「そうだ!あの時・・・12月になってから偶然町で私たちが事故の時に運ばれた病院の看護士さんに会って・・・それで・・・」


弥生は記憶の糸をたどっていった。


「そう!それで聞いたのよ!麻美が誕生日の次の日の朝に意識を・・・感情を取り戻したって」


「だから・・・私どうしても麻美の声が聞きたくて看護士さんに麻美が移転した病院にクリスマスの日に電話したのよ・・・」



弥生は、その時の事を思い出すと暗い表情になっていった。



「で、でも・・・あの時の麻美は凄く素っ気無い感じでとても冷たい声だった・・・」



麻美は弥生にすまなそうな表情を向けて言った。



「ごめんね・・・私の誕生日は6月だから、もうあの時は新しい心の麻美だったの・・・だから弥生に対する感情が記憶でしかなかったのね」



「・・・記憶というより、なんの感情も無いただの記録ね・・・」


「でも・・・でもね、その弥生の電話のおかげで私は自分を取り戻す事ができたの」


「取り戻す事・・・?」


「・・・そう、私は弥生のおかげで心を取り戻せたのよ・・・」
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